MESシステムとSPCを連動させるには?
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不良を「出る前」に防ぐSPCを、MESと連動させて現場で使いこなすための基礎と選び方を解説します。
SPC(統計的工程管理)とは?事後検査との違い
SPCの定義と目的
SPC(Statistical Process Control:統計的工程管理)は、製造工程の状態を監視し、工程のばらつきを管理・制御することで、特性の安定した製品をつくる手法です。製品の特性値のばらつきは工程パラメータのばらつきから生じる、という考え方が土台にあります。SPCの主な目的は次の5つです。
- 工程の現状を把握する
- 工程が変動したかを解析する
- 工程の重要な管理値を維持する
- より安定した工程に改善する
- 製品を検査する
また、自動車産業向けの品質マネジメントシステム規格であるIATF 16949では、SPCがコアツールの一つとしてサプライヤーに求められています。ギヤなどの自動車部品メーカーにとっては欠かせない手法です。
参照元:JEITA「電子部品・信頼性技術強化の取り組み/SPC実施ガイドの発刊について」(https://www.jeita.or.jp/japanese/assets/pdf/letter/vol24/07.pdf)
参照元:LRQA「コアツール 統計的工程管理 SPC 解説」(https://www.lrqa.com/ja-jp/training/iatf-16949-coa-spc/)
「不良が出てから取り除く」事後検査と「出る前に防ぐ」SPCの違い
従来の品質管理では、製造工程が終わったあとに完成品を検査し、規格を満たさない製品を取り除く方法が一般的でした。この方法だと、不良が判明した時点で手直しや廃棄が発生し、検査工数とあわせて時間とコストがかさみます。
SPCでは、寸法・重量・温度など品質にかかわるデータを工程ごとに集め、統計的に分析します。ばらつきや異常の兆候を早い段階でつかめるため、不良品が生まれる前に原因を調べ、設備や製造条件を調整できます。
検査で品質を確かめるのではなく、工程の中で不良をつくらない仕組みに切り替えること。これがSPCの本質です。
SPCで使う2つの道具「管理図」と「工程能力指数」
管理図と異常を判断するルール
管理図は、工程データの平均値や範囲などの統計量を時系列の折れ線グラフにしたものです。中心線と上下の管理限界線を引き、工程の状態を判断します。寸法や重量などの計量値にはX̄-R管理図、不適合品率などの計数値にはp管理図というように、データの性質によって種類を使い分けます。管理図はJIS Z 9020-1・JIS Z 9020-2として規格化されています。
異常かどうかは、点が管理限界線の外に出たかどうかだけで判断するわけではありません。管理限界線の内側に収まっていても、点の並び方に偏りがあれば異常の兆候とみなします。代表的な判定ルールは次のとおりです。
- 1点が管理限界線を超えている
- 連続する9点が中心線に対して同じ側にある
- 連続する6点が増加、または減少している
こうした判定ルールはJIS規格で示されています。規格値を外れる前に工程の変化に気づけることが、SPCで不良を「出る前」に防げる根拠です。
参照元:NAVINECT「品質管理」パッケージ(https://navinect.jp/app/hinshitsu-kanri/)
工程能力指数(Cp・Cpk)で工程の実力を数値化する
管理図は「工程が安定しているか」を確かめる道具です。これに対し、工程能力指数(Cp・Cpk)は「規格を満たす製品を安定してつくる実力があるか」を数値で示す指標です。Cpkは、工程の平均値とばらつきが規格の上限・下限に対してどれだけ余裕をもって収まっているかを表し、値が大きいほど工程の実力が高いことを意味します。
国内の製造現場では、Cpk1.33以上を「工程能力が十分」と判断する目安が広く使われています。
参照元:ITトレンド「SPC(統計的工程管理)とは?管理図・Cpk・SQCとの違いをわかりやすく解説」(https://it-trend.jp/process_management/article/464-0007)
参照元:株式会社一創「製造業の品質管理とは|受入・工程内・出荷検査と不適合管理をシステムで回す進め方」(https://www.issoh.co.jp/column/details/15705/)
MESシステムとSPCを連動させる4つのメリット
検査データを自動収集し、転記ミスと集計工数をなくせる
紙の検査表に記入した結果をExcelへ転記して集計する運用には、3つの弱点があります。転記の手間がかかること、入力ミスが起きること、そして過去のロットの不良をすぐに確認できないことです。MESと連動する品質管理システムを使えば、検査装置から結果を自動で取り込み、作業実績や検査実績とあわせて蓄積できます。
ある化学メーカーは、検査機器の検査結果をデータ分析ツールへ自動連携させ、SPCによる異常判定までを一つの流れで実行できる仕組みを構築しました。その結果、作業時間の短縮と人的ミスの削減につながっています。
参照元:MONOist「品質管理工程の効率化を目指し、化学メーカーがデータ分析ツールを導入」(https://monoist.itmedia.co.jp/mn/spv/2312/01/news082.html)
異常の兆候をリアルタイムに検知し、処置まで記録できる
自動で集めた測定データは、あらかじめ設定した判定ルールに沿って常に監視されます。ばらつきや異常傾向を捉えた時点で、画面へのポップアップなどで担当者に知らせます。
SPCの効果を高めるうえで重要なのは、検知したあとの動きです。現場担当者が異常への処置内容を入力し、管理職が承認する流れをシステム上で回せば、処置漏れやミスを防げます。過去の異常履歴を検索して処置状況を確かめたり、処理期限を管理したりできる仕組みもあり、「アラートを出して終わり」にならない運用が可能です。
製造履歴と紐づけて、不良の原因と影響範囲をすぐ追える
SPCを単体で使うのではなくMESと連動させる最大の意義は、品質データと製造履歴を結びつけられることです。MESは「いつ・どこで・誰が・どの材料や部品を使い・どの設備で・どのように製造したか」を、製品やロットごとに記録します。管理図で異常が見つかったときにこの履歴をたどれば、原因となった工程や材料ロットを素早く特定し、影響範囲を絞り込めます。
製品の識別番号にプロセス・稼働・材料・作業者などの情報をひも付けておけば、不良発生時に影響範囲を素早く正確に抽出でき、不良品の市場流出を防げます。
熟練工の勘をデータとして残し、技能継承につなげられる
熟練工が「なんとなくおかしい」と感じて設備を止める判断は、本人が退職すると再現できなくなります。この判断を管理図と判定ルールという客観的な基準に置き換えれば、経験の浅い作業者でも同じタイミングで異常に気づけます。
判断基準と測定値をデータで残すことは、熟練者の暗黙知を形式知に変え、技能を個人から組織の記録へ移す取り組みでもあります。
導入後に使いこなせる「MES連動のSPCシステム」の選び方
判定ルールの設定と、異常時の処置・承認フローに対応しているか
まず確認したいのは、管理項目ごとに管理限界値・判定ルール・警報レベルを設定できるかどうかです。規格値を変更するとき、管理者の承認を経てから有効化できるかも、設定ミスを防ぐうえで大切なチェックポイントになります。
あわせて、異常への処置入力から承認までの履歴が残るかも確認しましょう。判定ルールの設定にとどまる製品もあれば、監視や処置報告まで対応する製品もあります。
測定器や既存のMES・生産管理システムとデータ連携できるか
品質管理システムを単体で入れると、品質情報が生産工程に事後的にフィードバックされる形になりやすく、改善までに時間がかかります。
不良発生時の即時アラートや、設備・作業員・材料までさかのぼれるトレーサビリティを実現するには、MESや生産管理システムとの連携が欠かせません。いま使っている測定器や分析機器から検査データを自動で取り込めるかも、選定時に確認しておきましょう。
現場が直感的に使え、一部の工程からスモールスタートできるか
どれほど高機能なシステムでも、現場が使いこなせなければ効果は出ません。導入初期は操作に慣れないため、かえって作業に時間がかかることもあります。選定時はベンダーのデモに現場担当者も参加してもらい、画面の見やすさや操作の直感性を確かめましょう。
導入は重要寸法を測る工程などのモデルラインに絞って始め、効果を確認しながら対象を広げていく進め方が堅実といえます。
まとめ
SPCは、管理図と工程能力指数で工程のばらつきを監視し、不良を「出る前」に防ぐ手法です。MESと連動させれば、検査データの自動収集、異常のリアルタイム検知と処置記録、製造履歴との照合までを一つの流れで回せます。
システムを選ぶときは、判定ルールと処置フローへの対応、既存設備との連携、現場での使いやすさを確認しましょう。そのうえで一部の工程から段階的に始めることが、定着への近道です。
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