eBR・eDHR
医薬品や医療機器の製造現場において、長年の課題であった「膨大な紙の製造記録」からの脱却が加速しています。規制当局が求める厳格な品質証明と、製造現場の生産性をいかに両立させるか。その答えとなるのが、製造記録の電子化である「eBR(Electronic Batch Record)」と「eDHR(Electronic Device History Record)」です。
単なるペーパーレス化に留まらず、記録の信頼性を担保し、製品出荷までのリードタイムを劇的に短縮する、MES(製造実行システム)の中核機能としてのeBR/eDHRの重要性を詳しく解説します。
eBRとeDHR:業界ごとに異なる「電子記録」の定義
製造記録の電子化は、生産形態や規制の対象によって呼び方が異なりますが、その本質は「製造工程の全ての記録をデジタルで正確に保存する」ことにあります。
プロセス製造の「eBR(電子バッチ記録)」
主に医薬品や化学品などのプロセス製造で用いられます。原材料の配合、温度、圧力、反応時間などのバッチごとの製造条件を記録します。配合ミスや投入順序の誤りをシステム的に防止(ポカヨケ)し、品質の一貫性を担保するのが主な役割です。
ディスクリート製造の「eDHR(電子履歴記録)」
主に医療機器や精密機器などの組み立て製造で用いられます。どの部品が使われたか、誰が組み立てたか、検査結果はどうだったかという「個体(シリアル番号)」ごとの履歴を管理します。複雑な組み立て工程における作業漏れを防ぎ、万が一の不具合時に迅速な追跡(トレーサビリティ)を可能にするのが特徴です。
紙の記録が抱える「品質とスピード」の限界
従来のアナログな管理手法では、現代のスピード感ある製造現場や、高度化する規制要件への対応が難しくなっています。
膨大な転記ミスと「差し戻し」によるタイムロス
紙の記録書では、手書きによる読み間違いや、記入漏れ、計算ミスが避けられません。製造後に品質管理部門が行うチェック(レビュー)工程で不備が見つかれば、現場への差し戻しが発生し、製品が出荷できる状態になるまで数日から数週間を要することもありました。
eBR/eDHRを導入すれば、入力時に自動チェックが行われるため、「正しく入力されない限り次工程に進めない」仕組みを構築でき、ミスの発生を未然に防ぎます。
データインテグリティ(データの完全性)への対応負担
近年、規制当局は「データインテグリティ(DI)」、つまりデータの完全性や信頼性を厳格に求めています。紙の記録では改ざん防止や監査証跡(オーディットトレイル)の管理が極めて煩雑であり、査察対応が大きな負担となっていました。
デジタル化された記録は、「誰が、いつ、何を、なぜ変更したか」が自動的に記録されるため、ALCOA+原則(帰属性、判読性、同時性、原本性、正確性など)に則った運用を容易に実現できます。
eBR/eDHR導入がもたらす革新的なベネフィット
電子記録への移行は、単なる事務作業の効率化を超え、ビジネスモデルそのものにポジティブな影響を与えます。
「Review by Exception(例外によるレビュー)」による出荷短縮
eBR/eDHRの最大のメリットの一つが、例外管理です。システムが製造プロセスを監視し、あらかじめ規定された許容範囲外(逸脱)が発生した箇所だけを特定して表示します。
検査担当者は全ての記録をチェックする必要がなくなり、異常があった箇所に集中して確認を行えます。「異常なし」の記録確認を自動化することで、出荷判定までの時間を大幅に短縮し、在庫回転率の向上に貢献します。
リアルタイムでの製造進捗と品質トレンドの把握
紙の記録は「終わった後の結果」でしかありませんが、eBR/eDHRは「現在の状況」を可視化します。製造中のデータがリアルタイムでシステムに蓄積されるため、品質のバラつきの予兆を早期に発見し、対策を講じることが可能です。
過去のバッチデータとの比較も容易になり、経験則に頼らない、データに基づいたプロセス改善が加速します。
導入に向けた重要ポイント:ERPや設備との連携
eBR/eDHRを単独のツールとして導入するのではなく、工場のエコシステム全体と連携させることで、その価値は最大化されます。
ERP(基幹システム)とのシームレスな統合
ERPからの製造指示をMES(eBR/eDHR)が直接受け取り、製造完了報告を自動でERPに戻す。この連携により、事務的な入力作業をゼロにし、在庫管理と製造現場の同期を実現します。
製造装置(SCADA/PLC)からの直接データ収集
設備の稼働データを人間が読み取って手入力するのではなく、装置から直接データを吸い上げることで、ヒューマンエラーを完全に排除します。「自動化された信頼性の高いデータ」を記録の根拠とすることが、次世代の品質保証のスタンダードです。
まとめ
eBR/eDHRの導入は、医薬品や医療機器メーカーにとって「規制対応のためのコスト」ではなく、「競争優位性を築くための投資」です。記録の電子化によって担保される圧倒的な信頼性と、リードタイムの短縮が生み出す機動力は、激変する市場環境において大きなアドバンテージとなります。
紙からデジタルへ。製造現場の「言葉」をデータに置き換えることが、品質保証の未来を切り拓く第一歩となるでしょう。
システムを紹介
ニーズ別 MESシステム 3選
製造現場を管理するうえでの課題、要望により合ったMESシステムを紹介します。
MESシステム62製品(※)から、より自社に合った導入ができるよう、既存システムとのデータ連携が可能な「柔軟性」、ERP~MES~制御までを統合した「総合力」、現地の税制・商習慣・多言語への対応可能な「グローバル仕様」に対応している「3製品」を抽出。それぞれの課題や要望に合致する機能や支援内容を実現できるシステムを公式サイトやパンフレットの記載内容をもとに紹介しています。
既存の新旧・異なるメーカーの
生産設備のデータを可視化
一元管理したい。
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誰でも簡単に使えるようにしたい。
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柔軟カスタマイズ&直感的操作
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- 既存システムとのデータ連携が可能で、シームレスな運用を実現。IT導入補助金対象。
- 低コストでスピーディな導入。誰もが使える直感的な操作性。
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グローバル企業支援実績が豊富
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- クラウドタイプもあり。迅速・柔軟なテンプレート設計でグローバル展開が容易にできる。
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- 本製品・COLMINA MESを含め、グローバル展開を行うものづくり企業向けに開発。
- 富士通のグローバルネットワークを駆使したサポート体制を用意。
※本サイトでは、2026年2月3日時点でGoogleにて「MESシステム」「製造実行システム」で検索した際、上位100位までに製品、またはベンダーの公式サイトが表示され、どんなシステムかがわかる情報が記載されている62製品を調査。それぞれの課題や要望に合致する機能や支援内容を実現できるシステムを公式サイトやパンフレットの記載内容をもとに紹介しています。



